これからの医学はどこに向かっているのか

動物や植物、土、それらと共生する(多くはこれ)あるいは敵対する(これは1割ぐらい)微生物に対する膨大な量の知見が積み重ねられつつあります。今後、いままでの微生物に対する医学の扱い方を大幅に変更する必要性がでてくると思います。
腸内微生物あるいは土壌の微生物のことを知れば知るほど、我々が自然の連関の一部にしか過ぎないということが実感させられます。地球上の生命を育んできたのは実は微生物だったと。
私たち自身の自己治癒力を高めるにはどうすればいいのか。遺伝子分析が進歩し、そのおかげで免疫系や微生物に対する理解が進んでいます。そのことで、現在まで伝えられてきた、自然治癒力に対する先人の知識の科学的裏付けがなされることが期待されます。また新たな知識が付け加えられることも。
しかし、現実には微生物の働きを応用して、薬の開発が進んでいます。薬の開発はもちろん大切なことですが、それよりも、薬は最終手段と考えて、日常の身体生活、精神生活についてどうすればいいのか、食生活は? 環境との関連は?などなど、医療を必要とする前の段階、未病の段階での考え方が、科学的に解明されて、いままでなかなか実行できないできた人達の強い動機付けが可能になればいいのにと思っています。
日常の診療で感じることですが、薬を投与してしまうと、結果的に数値は正常化してしまうことが多いので、一見病気が良くなったような気になって、日常生活全般の見直しをしなくなる方々がほとんどです。それが実は大きな問題なのです。医療を提供する側だけの問題ではなく、医療を受ける方々にも考えて欲しい問題です。
医師になった頃に比べ、さらに新薬がたくさん開発され、医療全体に対して薬の役割がますます大きくなってきたような気がします。表面的な効果がすぐに検査値で現れるので、患者さんにとってわかりやすいので、医師もすぐに薬を処方してしまいます。薬を処方するほうが、薬を必要としないための生活や食事について説明するよりも短時間ですみますし、説明だけで薬を投与しないと保険点数も削られてしまいますし。
生活習慣病という考え方が出てきたのはいいのですが、生活習慣の見直しが進んでいくのかと思いましたが、現状の実生活でどのようにすればいいかということはお座なりにされて、ますます新薬の開発が宣伝され夢のような効果ばかりが取り上げられて、副作用はあまり報道されないまま、薬に対する依存度が増しているようです。
これからの医学はどの方向に向かって行くのか? 現場で仕事をしている医師として、少し暗い気持ちにならざるを得ないのが現状です。

 

健康相談・医療相談担当
医師 平田 修